【法人成り】個人事業と法人どちらがいい?個人事業主が会社設立するメリット・デメリット
こんにちは。足立区北千住の税理士根岸です。
個人事業主として事業が軌道に乗ってきて、「会社設立(法人成り)」を考えている方もいるのではないでしょうか。
法人成りには、個人事業主と比べて社会的な信用面や税金面で大きなメリットがある一方で、会社設立費用の発生、ランニングコストや事務負担の増加といったデメリットもあります。ケースバイケースではありますが、事業の状況によっては法人成りせずに個人事業主でいたままの方がメリットが大きい場合もあります。
今回は、法人成りを検討する上で必ず押さえておきたいメリットとデメリットについて詳しく解説します。
法人成りの主なメリット
法人成りによって得られる大きなメリットは、主に次の4点です。
①社会的信用力の向上
法人は個人事業主と比べて、社会的信用力が高く見られる傾向があります。
企業間取引(BtoB取引)が多い業種においては、「個人事業主とは取引しない(法人限定)」と決めている企業も少なくありません。実際に「個人事業主として事業を行っていたが、取引先から法人にしてくれと言われて法人成りした」というお話を聞くこともよくあります。法人成りすることで、大企業との取引や大規模な案件を獲得しやすくなるのが大きな強みです。
また、金融機関からの資金調達(融資審査)や、優秀な人材を採用する場面においても、法人であることがプラスに働くケースは非常に多いと考えます。
②所得が多い場合は税負担が軽くなる傾向(節税効果)
所得税は、所得が増えれば増えるほど税率が上がる「累進課税」となっており、最高税率は住民税とあわせて55%です。
一方で法人税の実効税率は約34%程度で一定です。さらに中小企業の場合は、所得800万円までの部分について「軽減税率(約21%〜23%程度)」が適用されるため、これ以上に税率が下がります。
一般的には所得800万円が法人成りの目安とされており、これ以上の所得が出ている場合は、法人成りした方が税負担を抑えられるケースが多くなります。
ただし、役員報酬をいくらにするのかによっても法人及び個人の税額は変わってきます。バランスを考えて実際にシミュレーションをすることをおすすめします。
また、次のとおり、経費にできる範囲も法人の方が広い傾向にあります。
- 役員給与:会社で経費にしつつ、個人でも「給与所得控除」を使えるため節税になる
- 退職金:役員退職金を会社の経費にしながら、個人側でも手厚い退職所得控除を受けられる
- 社宅賃料:会社で賃貸借契約を結び社宅とすることで、家賃の多くを会社の経費にできる
- 旅費日当:規程を作成することで、会社は全額経費にでき、受け取る個人は非課税となる
③赤字(欠損金)の繰越期間が長い
事業で出た赤字を翌年以降に繰り越して相殺できる期間は、個人事業主(青色申告)の場合は「最長3年間」です。
一方で、法人の場合は「最長10年間」も赤字を繰り越すことができます。設立当初に設備投資などで大きな赤字が出た場合でも、将来利益が出た際に税金を抑えやすくなります。
④決算月を自由に設定できる
個人事業主の課税期間は「1月1日から12月31日まで」と法律で固定されています。
一方で、法人の場合は事業年度(決算月)を自由に決めることができます。自社の繁忙期を避けて閑散期を決算月に設定することで、決算作業の負担を減らしたり、節税対策や資金繰りの計画を立てやすくしたりすることが可能です。
法人の決算月の決め方

法人成りの注意すべきデメリット
一方で、法人化することで次のようなコストや制約が発生します。
①会社設立費用の発生とランニングコストの増加
会社を設立する際には、株式会社の場合は約20万円、合同会社の場合は約6万円の法定費用(登録免許税や定款認証手数料)がかかります。手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合にはこれに別途報酬が加算されます。
さらに、設立後も次のようなランニングコストが毎年継続してかかります。
- 法人住民税の均等割:業績が赤字であっても毎年最低約7万円の税金が必ずかかる
- 社会保険料:法人は社長1人の会社であっても加入義務があり、給与の約15%の会社負担分が発生する
②記帳・税務申告の複雑化
個人事業主以上に、法人は「複式簿記」による厳格な帳簿付けが義務付けられます。
また、提出する税務申告書も法人税・法人住民税・法人事業税・消費税など多岐にわたります。個人事業主の確定申告と比較して法人の申告は専門知識がないと自力で申告するのは非常に困難なため、会計・税務処理を税理士に依頼するケースが多いです。当事務所においても法人と個人事業主の報酬は分けて設定しておりますが、税理士の報酬については、法人の方が個人事業主よりも高くなる傾向があります。
【要注意】年の途中で法人成りし、法人個人双方で申告が必要なケース
年の途中で法人成りし、個人事業を法人に引き継いで廃業した場合は要注意です。その年の1月1日から法人に事業を引き継ぐまでの期間については、個人事業主側も翌年に確定申告が必ず必要になるということは忘れないようにしましょう。
③お金の自由度が低下する(役員貸付金の注意点)
法人と経営者個人は「完全に別人格」です。会社を設立する場合は必ず意識しましょう。
会社の資金をプライベートで自由に使用することはできず、もし自由にお金を引き出してしまうと税務上「役員貸付金」として処理されます。このような役員貸付金が残っていると、金融機関からの融資審査で極めて不利になるケースが多いです。金融機関の立場からすると、会社に貸したはずのお金が役員貸付金として経営者個人に流れてしまうのではないかという懸念を持つためです。
会社から個人にお金を動かすには、「役員給与」や「経費」として正しく処理しなければならず、役員給与の金額も原則として「期首から3か月以内」に決定した同額を支給し続けなければならないというルール(定期同額給与)があります。
最後に
以上、法人成りのメリット・デメリットについて解説しました。
個人事業と法人のどちらが良いかは、事業の規模、利益の額、取引先との関係などにより、正直ケースバイケースです。
お悩みの方は、シミュレーションも含めて、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
ただし、お金(税金)の有利不利だけで法人成りを決めることはおすすめしません。デメリットを知った上で検討しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

この記事の監修・執筆者
根岸税理士事務所
税理士 根岸 峻佑
登録番号:第156008号
所属:東京税理士会足立支部
freee認定アドバイザー
東京都足立区の北千住で税理士事務所を営んでいます。
30代半ばに地方公務員を辞め、4年の期間を経て税理士に転身しました。プライベートでは小学生と保育園児の娘を育てる2児の父です。
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